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黒猫の勝手気ままな放浪記

 自分の趣味に走るとこうなってしまった(」゜□゜)」 という女子高生が送るブログです。
 § Not title 最終話 
2008年03月08日 (土)

執筆者 桜桃さま 「追憶の桜吹雪」
  *  *  *


 社長室という密室で、二人の男が深刻な面持ちで佇んでいる。
「社長、それは一体どういう・・・」
「言葉通りの意味だ。あれが持ち帰った鉱石は特殊な磁場を持っている。時にそれは魔法のエネルギーとなり、時にそれは近くにあるだけで殺戮兵 器になる」
 張りつめた空気は静寂に呑まれ、重力が増したかのような感覚に陥る。
 社長の言葉通りならば、チカゲが持ち帰った鉱石は諸刃の剣ということ。
「では鉱石をすぐに廃棄すべきでは・・・」
「科学の進歩にはそれ相応の犠牲が伴う」
「ですが」
「他言無用だ。何があってもチカゲには話すな」
「社長!」
 言い募る黒衣の男を一瞥し、社長は冷淡に告げた。
「今すぐ出て行け。研究が完成するまで、二度とここへは訪れるな」
 落雷に打たれたような衝撃を受け、黒衣の男、社長の専属ドクターはその部屋を後にした。
「愚かな・・・」
 背後の扉を顧みる。
 その向こうには心臓病を患ったカンパニーの社長がいる。
「ご自身の命より、愛娘の功績を選ぶというのか・・・」
 医者として今の自分に何ができる。
 初めて担当した患者が、こんな馬鹿げたことをするとは思わなかった。
 全く、カンパニーの社長というのは得体が知れない。
 新米ドクターを専属にし、入院しろという忠告も聞かず、「命を削る石」を研究しろというのだ。
「その地場の元がわかれば打つ手はあるが・・・」
 時間がない。
 社長の容態はいつ急変するかわからない。その上、「あの鉱石」が傍にある。
 自分はあくまで医者であって、物理学者ではないのだ。
 成すべきことは患者の安静を保つこと。そして悪化を招く種を排除すること。
「クビにされるならその方が有り難い」
 次はもっと素直な患者を受け持ちたいものだ。
 身を翻し、長い廊下を歩いていく。
「とりあえず麻酔が必要か」
 強制入院の準備をすべく、男はカンパニーを出て行った。



「神よ、何故時を待たない・・・」
 一足遅かった。
 片膝を付き、社長室で倒れている患者の脈を取る。
「手遅れか」
 己の不甲斐なさに歯噛みする。
 出て行けと言われても、医者として留まるべきだったのだ。
 黒き医師。心臓手術の天才と言われる若き医師。
「そんな肩書きがあっても、頑固じじいには敵わないのさ・・・」
 呟いた言葉は己の耳の奥で虚しく響く。
 社長の傍らに寄り添うように瞼を閉じる夫人を見たとき、熱いものが込み上げてきた。
 首筋にそっと手を当てる。
 穏やかに眠っている。そう見える夫人もまた、社長と運命を共にしたようだ。
 重なっている手の下から、淡い閃光が漏れる。
 そっと彼らの手をどかすと、紺碧の鉱石が姿を現した。
 まるで我が子のように抱える様を見て、男は目を細め、立ち上がる。
「貴方の医師は、貴方の意志を汲みますよ」
 その言の葉は音になることなく、部屋を駆ける風に掻き消された。
 カタンと音がする。
 視線だけ背後へ送ると、戸の隙間から覗く影が見えた。
 恐らく「あれ」が社長の「希望」だろう。
 静寂という名の衣に包まれた二人を一瞥し、男は窓から外へ飛び降りた。 

 
  *  *  *


 チカゲの背筋を氷塊が滑り降りた。
 嘘だ。そんなはずはない。
 男に向けられる銃口が小刻みに震える。
「戯けたことを言うな・・・!」
「君の求める真相を告げたまでさ。不服か?不服だと言うのなら、俺の心臓を打ち抜けばいい」
 あくまで淡々と告げる男に、チカゲは言い返すことすらできなかった。
 引き金に掛けた指が動かない。
「・・・・・・っ!」
 自分はこんな現実のために研究をしてきたというのか。
 こんな現実のために・・・・・・

 銃声が儚く木霊した。




  *  *  *


 チカゲ・クロウ。数年前、この世の全てを手にした者。
 富、名声、権力、それらを支配した若き少女は、突然失踪した。
 カンパニーが全力で捜査を依頼したが、その真相は闇に葬られ、迷宮入りとなっていた。

「ドクター、これをご覧下さい」
「これは・・・」
 黒衣を羽織った男性が、ガラスの球体を覗き込む。
 中央には光を放つ鉱石が浮いていた。
 その光は青く、青く、どこまでも青く ―――― それはまるで海のように。
「よくやったな」
「いえ、まだこれからです」
 若い女性は鉱石を真っ直ぐに見据える。
「そうだな。・・・これからが本番だ」

 確実に、時は刻まれていた。


Fin.


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